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建て主ドキュメント〜自分らしい家づくりの進め方は100人100様〜
昔話のはじまり、はじまり。ここは、筑波山の麓にある森の中。一匹のイノシシが、獲物を探して歩いておったとさ。
イノシシは、草はらの向こうの方に煙が出ているのを見つけた。きっと、あそこに行けば、美味しい獲物があるに違いないと、思った。
煙の出ているところに近づくと、石段があり、それを上った。
すると、草はらのなかにぽっかり穴が開いている。何だろう?イノシシは、そのなかを覗き込んだとさ。
アッと思った時は、もう遅い。イノシシは、その穴に吸い込まれるように、地下に落ちて行ってしまった。

落ちたところは、熱湯が煮えたぎる大きな鍋の中。その前に座っていたのは、なんと、イノシシ鍋を食べようと準備して、イノシシが落ちてくるのを待ち構えていた、この家の主人だった。イノシシは、まんまと主人に食べられてしまったとさ。

森に溶け込む家を、自力で建てる
こんな奇妙なファンタジーを語ってくれたのは、この家の主人、瀬川さんである。瀬川さんの家は、家と言うよりも、窓のある小山のようであり、みごとに森の中に溶け込んでいる。そして、瀬川さん自身が、1年以上の歳月をかけて自力で建てた家である。

八郷町との運命的な出会い
瀬川さんは、もともとこの土地とは関係のないところに住んでいたが、あるとき、運命に引き寄せられるように、この山の麓の町を訪れた。この土地の環境に惚れこんで、この地に住むことを決意して、土地を探し始めた。川のせせらぎのあることを条件に不動産屋さんに紹介してもらったのが、この土地だった。

この土地に立っていた木を構造柱に
瀬川さんは、できうるかぎり自分の力で、できうる限りこの地の材料を使って、家を建てることを決意した。だから、この家の構造柱は、この地で伐採した木である。そのまま使っているので、乾燥もさせてない。

この土地に埋もれていた石を壁に
道路と家を作るために整地したら、大きな石がいっぱい出てきた。そこで、その石を、壁の主な材料にした。

この土地に生えている草を屋根に
屋根にはゴムシートを敷いて、その上に土を乗せたら、しばらくするうちに、屋根全体が草むらになった。

北向きの窓のススメ
この家は北側に大きな開口があり、隣地の斜面の森が実にきれいに見える。このプランは、南からの陽があたる樹木を見ることこそ、最高の庭の楽しみ方である、と考える造園家・瀬川さんの思想を見事に体現している。

オンドルのススメ
家の外にある窯には、夏でも薪を絶やさない。ここで焚いている炎の煙が、お風呂を沸かし、家をあたためるオンドル(床下温風暖房)となって、床下を通った後に、イノシシが見つけた煙突から出ていっているのである。

愛妻に、新しい家をプレゼントする
瀬川さんは、この家を建てた4年後に、すぐ近くに、もうひとつの建物を、これもセルフビルドで建てた。最初の家とは打って変わって、モダンスタイルの白い家である。これは篆刻家である奥様のための家のために建てたのである。

奥様に印を作っていただいた。大胆な意匠デザインする瀬川さんに対して、奥様の篆刻のデザインは、実に緻密である。


隠れ家バー@筑波山麓八郷町
そして、もうひとつ。瀬川さんは、おしゃれなバーを、屋外につくった。この壁をなす石積みは、もちろんすべて、この土地から出てきた石である。

そのバーのあたりを中心に、私の仲間を集めてのパーティーを開催させてもらった。東京からはずいぶん離れている場所なのに、ちょっと声を掛けたら30人も集まった。梅雨時だったので、テントを張っていただいたが、雨はふらずに、8時間の超ロングパーティーを楽しんだ。最後は、ホタル観賞で締めくくった。

- 建主: 瀬川夫妻
- 設計・施工 : 瀬川正明
- 文・写真: 川島天晴



